多彩な工業用内視鏡が各社から提供されている中で、導入にあたり「どれを選んだら良いかわからない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そこでこちらの記事では、「工業用内視鏡の選び方」についてまとめています。スペックや価格帯など、さまざまな観点から解説していますので、ぜひ導入時の参考にしてみてください。
工業用内視鏡を選定する際には、自社の用途に応じて選定することが非常に重要です。こちらの記事では、まず工業用内視鏡の役割と使用目的、そして用途別の選定基準をまとめています。
工業用内視鏡は、人が直接見ることができない狭い場所・暗い場所などの確認や点検を行い、材料の破断やひび割れ、錆の発生など問題のある部分を発見するなどの役割を持っています。
さまざまな場所で使用されており、例えば自動車のエンジンや飛行機の内部、発電所のタービンや発電機の内部、水道管やガス設備の内部を点検・確認するといったように、人々の安全な暮らしを支えているといっても過言ではありません。そのほか、食品業界や設備業界、建築・土木業界など非常に幅広い業界で用いられています。
現在、各メーカーからさまざまな工業用内視鏡が提供されています。そのため、実際に自社で工業用内視鏡を導入したいと考えた場合には、選定基準をあらかじめ知っておくことが必要です。
この選定基準は、「どのような用途で使用するのか」によって変わってきます。例えば、曲がりくねった配管の検査に使いたい、暗い場所を点検したい、水に触れる可能性がある場所の点検に使いたいなど、その用途に応じた機能を持った工業用内視鏡を選択することが大切です。
さまざまな種類が提供されている工業用内視鏡から、自社に合ったものを選ぶ場合のポイントをご紹介します。ここでは、「リジッド(硬性)内視鏡の選び方」「フレキシブル(軟性)内視鏡の選び方」「ファイバースコープとビデオスコープの違い」という3つのポイントについて見ていきましょう。
例えば、精密検査に工業用内視鏡を使用したいケースでは、「リジット(硬性)内視鏡」と呼ばれる製品を選ぶのがおすすめです。これは、チューブ部分が金属製で作られていることから硬く・曲がらないという特徴を持つ内視鏡であり、肉眼で点検できない精密機械の狭小部位や暗いところなどを確認したい場合などに用いられています。
この時、対象物に応じたサイズのものを選ぶことがポイントとなってきます。中には非常に細かい部分を見ることができる直径1mm以下のものも提供されていますので、どのようなものが対象物となるかで選択してください。
狭い場所や曲がりくねったところの確認・点検を行いたい場合には、「フレキシブル(軟性)内視鏡」がおすすめです。このタイプの内視鏡は、対象物に挿入する部分に柔らかく曲げられる素材を使用している点が特徴となっているため、対象物の形に沿って入っていくことができます。
フレキシブル(軟性)内視鏡にも種類があり、「ファイバースコープ」「ビデオスコープ」があります。導入する際には、どちらの種類を選択するかもポイントのひとつとなります。
上記でも紹介している「ファイバースコープ」と「ビデオスコープ」ですが、どちらも曲がった配管の中の検査や確認を行える内視鏡です。
ファーバースコープは光ファイバーの先端にレンズを搭載しており、対象物の内部の映像を光ファイバーを通じて外部のモニターなどに転送を行います。また、ビデオスコープはカメラを使用して対象物の内部を捉えた上で、外部にビデオ信号として送信します。この2種類を比較した場合、ビデオスコープの方がより遠くへの映像転送に向いていることから、ファイバースコープよりも距離の制約が少ないといえます。
以上から「どのくらいの距離の点検や確認を行いたいのか」という点が、ファイバースコープとビデオスコープを選択する際のひとつのポイントとなります。
続いて、導入する製品を検討する上でチェックすべき項目やスペックを紹介していきます。ここでは「画質と解像度の重要性」「挿入部の柔軟性と操作性」「LED照明の有無」「防水・耐久性」の4つのポイントをまとめました。
対象物の検査や点検を行う際には、画質や解像度が重要なポイントとなってきます。例えば、工業用内視鏡に搭載されている2.4インチから3.5インチほどの大きさの画面を使用して内部の確認を行うケースでは、あまり解像度の違いが感じられないかもしれません。
しかし、例えばパソコンやモニターなどで確認を行いたい場合には、解像度の高さや画質も十分に確認することが大切になってきます。また、単純に画質が良ければその分点検や確認もスムーズに行いやすくなります。そのため、大きな画面で確認したい、きれいな映像でスムーズに確認作業を行いたいなどの要望がある場合には、高精細カメラ搭載モデルの選択がおすすめです。
工業用内視鏡は、さまざまなところの点検などに用いられます。そのため、挿入部の柔軟性や操作性について確認しておくことで、幅広いケースに対応できるようになります。
例えば、先端の可動域が広ければ広いほど、対象物がどのような状態なのかをしっかりと確認できます。中には可動域が360度の工業内用視鏡もあります。このようなタイプであれば、さまざまな角度から対象物の確認ができます。
また点検をスムーズに行うには、操作のしやすさもポイントのひとつとなってくるため、稼働範囲と操作感も導入時にはチェックしておきたい項目です。
操作感については、実際にデモ機を利用してみるのも選択肢といえますので、貸し出しを行っているところがあればいちど利用することによって使い勝手を実感できます。
場合によっては、暗い場所での点検作業に工業用内視鏡を使うケースもあります。そのような場合には、LED照明を搭載しているものを選択することがポイントです。このLED照明によって、暗い場所でも視認性を確保でき、点検が行えるようになります。
防水性や耐久性も導入時に確認しておくべき点です。工業用内視鏡は、さまざまな場面での使用が想定されます。例えば水に触れる可能性がある場所の点検や、高温になる場所の点検を行うなど、使用環境に合ったモデルを選ばなければ内視鏡が故障してしまい、作業が中断してしまいます。
この点から、まずは「どのような環境での使用が想定されるのか」をよく検討し、防水性や耐久性など想定される環境に合った性能を持つ製品を選ぶことが大切です。
最後に、「価格帯別」の工業用内視鏡の選び方をご紹介します。コスト重視の低価格モデル、バランス重視の中価格帯モデル、プロ仕様の高価格帯モデルと3つのパターンに分けて解説していますので、ニーズに合わせて参考にしてみてください。
「コストを重視して選びたい」という場合には、エントリーモデルの選択がおすすめです。エントリーモデルの場合には機能はシンプルであるものの検査に必要とされる機能は搭載されているため、「基本的な性能があり、余計な機能は不要」と考えているケースにも適しています。
また、できるだけコストを抑えたい場合には、モニタのサイズが小さめのものを選ぶと価格が抑えられる傾向があります。ただ、2.3〜3.4インチ程度のサイズであれば一般的な大きさであるといえるため、利用に支障は出にくいといえます。
「機能面と価格のバランスが良い工業用内視鏡を選びたい」と考える場合には、中価格帯のモデルがおすすめです。この価格帯のモデルは、画質や耐久性に優れている点が特徴といえます。
例えば、「きれいな画質を用いることで効率的に点検作業を進めたい」、「耐久性が求められる現場での点検作業がある」などの場合は、中価格帯モデルをチェックしてみてください。ただし、特殊な環境に対応できる耐久性を持った内視鏡の場合には、コストが高くなってしまうケースもあるため、性能と価格のバランスを見ながら製品選びをすることが大切です。
「高性能な工業用内視鏡を使用したい」というケースでは、プロ仕様の高価格帯モデルから選定することがおすすめです。例えばフルカラーの大画面を搭載、ノイズの少ない高画質の画像を提供、防塵・防滴構造の採用、非常に高い耐久性を持っているといったように、機能が充実している点が特徴といえます。
高価なものでは100万円を超えるものもありますので、とにかく高機能な工業用内視鏡が必要な場合には、この価格帯の製品をチェックしてみてください。
こちらの記事では、工業用内視鏡の選び方についてさまざまな観点から解説を行ってきました。現在、各メーカーから数多くの工業用内視鏡が提供されていますので、導入にあたってはどの製品が自社に合っているのかわからないと感じるケースもあるかもしれません。まず重要となってくるのが「どのような用途で使用するか」という点。この部分がはっきりすると、必要な性能なども把握できるようになります。
工業用内視鏡には、大きく分けてビデオスコープ・ボアスコープ・管内カメラがあり、それぞれでニーズが異なります。どのような場所を確認・検査したいのかを明確にし、自社に適した製品を選びましょう。